初めて出会ったとき、ずっと探していたものに出会えたような、 ずっとほしかったものをもらえたような、 不思議な気持ちになった。 きみに会えたことが、しあわせ。 ねえ、うたってよ。 きみのうたが、すき。 やさしい詩を、ぼくに紡いで。 はちみつソーダ … 0 明滅するパソコンに表示されたメールボックスの中、太字で強調されている新着メールは一件。 おかえりなさい、という件名に口元が弧を描いた。差出人の名前は予想通りで、ここ数件同じ名前が連なっている。 ハチミツ。 少し前からメールの遣り取りをするようになった顔も知らない友達で、最近の僕の元気のもとだ。 『件名:おかえりなさい 本文: ソーダさん、おかえりなさい。 お疲れさまー。 今日もお仕事遅かったのかな。 いっつも遅いみたいだから心配だよ。 火曜日の日記に、ちょこっとぼくのこと書いてくれてたでしょう? あれ、すごい嬉しかったんだ。ありがとう。 ソーダさんの日記にぼくの名前が出る日がくるなんて、夢みたいでした。 嬉しさのあまり、詩を書きたくなってうずうずしちゃったよ! 仕事がんばる元気ももらっちゃった。 ソーダさんはしんどかったら溜めこみそうだから、あんまり無茶しちゃだめだよ。 いつも頑張ってんだから、無理しないように。 あ、しんどいだろうから、メールの返事は気にしないでください。 じゃあ、またメールします。 ハチミツ。』 メールに目を通した僕は、口許を緩める。 身体から、仕事の疲れとかいらいらとか、毒素みたいなものが抜けていくような気がした。 「がんばる元気をもらってるのは、こっちの方だよ」 こつ、とディスプレイを爪で叩いた。 ああ、遠いのに、どうしてハチミツとの距離はこんなにも近いんだろう。 ハチミツという名前の通り、送られてくるメールは透明なやわらかい色をしていて。綴られている言葉は、いつも、やさしい甘さで僕の胸に染みていく。 ハチミツのことをただの友達と言い切ってしまうのは難しい。 友達に抱くもの以上の感情を、僕が彼に対して持っているからだ。 初めてハチミツと僕がコンタクトを取ったのもメールだった。 |
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